モラトリアムを抱きしめて
「落ち着いたかしら?」

ぬるく入れた二杯目のココアを少女はゆっくりと飲んでいた。

何度も帰ろうとする少女を何とか引き止める事ができた。

しかし、これからどうしよう。

振り出しに戻り眉間に皺を寄せていると、「ふ」と小さな声が聞こえた。

「ん?今笑ったわよね、ね?」

「だって……」

ニコッと笑った少女はもう一口、ココアを飲みながらソファーを撫でる。

「ちょっとー」

私も一緒になって笑顔になってしまった。

少女を引き止めようと必死で、最後に出た言葉が「帰るんなら拭いてからにしてよ!」だった。言った自分が笑ってしまったんだけれど。

それから2人で掃除をして……


―親もダメ警察もダメとなると、どうすればいいのだろう。


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