モラトリアムを抱きしめて
いつまでそこに居たのだろう。私には時間を気にする暇も人目を気にする余裕もなかった。

いつしか手を繋いで家まで帰っていた。

夜風に当たりながら、ぼんやり思った。きっと初めて会ったあの時も、はっちゃんはこうして私を家まで送ってくれたんだと。

私は自分がわからないけれど、はっちゃんは私を知ってくれているような。

こんな自分がショックだった。私は私を一番知っていると思っていたのだから。

私以外に私を知っていてくれる人はいないのではないか。

そのわからない不安と痛みをはっちゃんは癒してくれている、そんな気がした。


「ありがとう」

家の前に着いた時、ホッとして素直に出た言葉に、はっちゃんは照れた様子でニコリと笑った。


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