モラトリアムを抱きしめて
何気なく押したボタンが爆弾のスイッチなら、救われたのだろうか。

それとも、キラキラ輝くイルミネーションのスイッチなら、ワクワクしただろうか。

私にとってそのボタンは、バスを停めるような物だったのかもしれない。


私は流れていく時間と一緒に『再生』ボタンを押した。


“――…初美ちゃん?”


聞き覚えのない中年の女性の声だった。


“えっと、浩子です。覚えてるかな?浩子おばちゃんです。


お母さんが、倒れました。


連絡下さい――”



お母さん?



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