モラトリアムを抱きしめて
母はどこまでも女だった。

悪魔よりもしたたかで、残酷な。

どこぞのアバズレの方が少しはマシだと気付いたのは、随分年を重ねてからだった。

母は派手な服や化粧を嫌い、いつも小綺麗にまとめていた。

そして、どこか儚げなのだ。

少女のようなあの人。

恨んだり憎んだりすることは、無抵抗の相手を攻撃しているような、そんな気分にまでさせる。

私は何を恨み、何を憎めばいいのだろう。

このまま、忘れたままでいた方が幸せだっただろうか。

でも、結局こうして思い出してしまった。

忘れることなんかできなかった。


ナイモノにはならないのだ。


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