モラトリアムを抱きしめて
「初美ちゃんよね?おばちゃんよ、浩子よ」

「浩子おばちゃん?」

「あら〜立派になったわね」

浩子おばちゃんは暗く冷たいこの場所に似合わない明るい声で話した。

そして、私が立ち上がり一礼すると小さな笑顔を見せる。

昔から変わっていない。

浩子おばちゃんは悲しいような、困ったような笑顔で笑う。

あの、哀れむような目で。


「今ね、手続きしてたのよ。 私も少し前に着いただけなんだけど……」

「少し前?」

「そうよ〜飛行機のチケットが取れなくて車できたのよ。 1時間くらい前かな」


母は、誰にも看取られずに逝ったんだ。


< 74 / 109 >

この作品をシェア

pagetop