モラトリアムを抱きしめて
少女の手だった。

もたれるように、私の腕を掴んだ小さな手。

公園を囲う枯れた木々をザワザワと揺らす強い風が吹くと、乱れた髪で隠れていた少女の顔が見えた。

――……キレイな子。

おでこには、衣服に付着している血液の原因と思われる切り傷。

頬にも擦ったような、引っ掻いたような跡がいくつかあった。

それでも透き通るような白い肌と、大人びた顔立ちは美しいと言えるものだった。

そう少女に見惚れたのも束の間。

激しい頭の痛みが私を襲う。

いつもの頭痛……だけれど、もっと強い。

少女を救うどころか、意識を保つのがやっと。


立っていられず少女と重なるように倒れた、冷たく硬い土の上は、ザクりと私と少女をひと突きにした。


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