モラトリアムを抱きしめて
ベンチ。汽車の遊具。

白くて丸い時計。


でも何で……

この公園とあの公園は全く別の場所なのに。

あの子……


もしかして、あの子は……


その時、急に背後からジリッと音がした。

振り向いたと同時に、私は立ち上がりそれに駆け寄っていた。


「はっちゃん!」


私ははっちゃんをギューっと痛いぐらいに抱きしめた。

やっぱり……


「あなたは……」


涙が止まらなかった。


「――……私、なの?」

はっちゃんは幼い頃の私。絶望という言葉を知ったあの日の私。


その時、足りなかったピースを見つけたように、私は全てを思い出した。


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