【キセコン】初秋の海物語

「先ず、舟で急に立ち上がってはいけません」
「はい」
「船体が揺れるから他の人ごと放り出されるからね」
「はい」
「次に、無理ならムリって言って下さい」
「はい」
「対処のしようがあるかもしれないから」
「はい」

俺の注意を神山さんは神妙に聞いていたが、その後ろでおじいさんが爆笑している。


今回のことについて、おじいさんには「俺は関わらんからお前が面倒みろ」と、言われている。
おじいさんは釣りに専念する気満々で、装備もいつも通りだ。

心許なくあり気楽でもあるが、笑われるのはちょっとなぁ。


「本当。なんでも聞いてね。神山さん、初心者なんだから」
「うん」
それから、神山さんはチラッとおじいさんを見て耳打ちした。
「五十嵐と五十嵐のおじいさん…似てないね」
意図を汲まれました。
「…血は繋がってマス」
性格というのは後天的なモノなのだよ。

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