サグラダ・ファミリア
「ゆうこさんさぁ」
白髪の方から、声を掛けて来た。
「兄ィのこと、どう思ってたの?」
「大切に・・・」
「ゆうこさんにとって、兄ィは何だったの?」
「・・・何って」
「やっぱ俺、兄ィが可哀想だよ」
眉間に皺を寄せ、白髪は私を睨んだ。


ふいにシンが、白髪の前に部屋の鍵を出した。



「部屋、最初に選ばせてあげるよ」

シンは私と白髪の間の、緊張の糸をプツンと切った。

「いいよ別に」

白髪が不貞腐れた声を上げると、
シンは薄い笑みを浮かべた。
「海良く見えるのがいいんじゃないの?
 さっき力入れて交渉してたもんね、ほら」
「・・・」

白髪がしぶしぶ、301を手に取った。


「ゆうこ、205と206どっちがいい?」
「あ、・・・どっちでも、
 シン好きなほう取って」
「俺はゆうこと一緒がいいから」
「・・・え」
「ゆうこが居るほうなら、どっちでもいい」
キラキラと、輝くイケメンの無邪気な笑みを前。
私は呆然としていた。

空気清浄機能でも、
備えているのかと思える程、
さわやか涼しいスマイルに、
太刀打ちができない。

私は魅了されつつ、シンを形容するのに、
ふさわしい単語を思いついていた。

マイペースな王子・・・。マイペース王子。


「同室?!ダメだよ!!!」


白髪の叫びが、ロビーに響き渡った。


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