サグラダ・ファミリア
そこでまさか、予想もしなかった白髪の行動。
白髪は私の肩を掴み、シンから距離を取らせると、
かがんで私と目線を合わせて来た。

「わっ?!」
私が構えても気にせず、私を覗き込むと、
眉間に皺を寄せ、外国人フェイスで叱るような表情。
普段の日本人喋りで、忘れてしまっていた、
人種の違いを感じる。
「あんたどういうつもりだ?!」
「え・・・?」
「あんたにはガッカリだ!
 狐兄ィはあんたを守って死んだんじゃないかっ、
 求婚されてたんだろ?!
 兄ィはあんたを好きだった!
 あんただって兄ィのこと、好きだったんだろ?
 何だよチョット顔の良い奴に迫られたぐらいで、
 ・・・俺哀しいよ、
 あんたがそんな女だったなんて」
私は咽喉が塞がって、情けないことに泣きそうだった。
「狐は死んでない」

狐は・・・死んでない・・・。

私はまだ、狐を、諦めていない。
狐を復活させることができるなら、
私は私が消えても良い・・・。
シンについて来たのも、シンなら狐を、
何とかできると思ったからだった。

「私は・・・」
「大きなお世話だよ」
私の声を遮り、シンが発言した。

「狐は消えたけど、
 ゆうこを縛るつもりで消えたわけじゃない、
 ・・・俺にゆうこを取られたくないのは、
 狐じゃなくておまえだろ、
 死を説得の道具にするな、死者に無礼だ」
「・・・」
シンの厳しい言葉に、白髪はぐっと押し黙った。
私は白髪に、何て声を掛けていいのか、困った。

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