サグラダ・ファミリア
狐はクイナの横、美女の姿で悲しげに佇んでいた。
広場からはスペインの街が一望でき、
開けた空気が頬を冷やしてくれた。
黒と灰の建物が、
みっしりと大地を覆っている様は日本と良く似ている。

さわやかな風の吹くこの丘の上の空間に、
気を許せる顔ぶれが集まっている。

今まで味方だった集団との対決に、恐怖していた心が、
少しだけ癒されて笑みが浮かんだ。


広場を囲む屋根つきのベンチゾーンに、
ゆうこさんと同じぐらい薄くなっている、生霊のシンが座っていた。
本体のシンと、生霊のシンは、互いに見詰め合って動かない。
数時間前まで、片方が片方を消そうとしていた。
立場の違いが、感覚の違いを産んでいた。
消えない方は、消えていく方の痛みが想像できなかった。
あれほど他者の死に心を痛めた人が、
信念に振り回され、二つの人格を死に追いやってしまった。
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