サグラダ・ファミリア
いつもは目を覚ますとすぐ、
夢の内容は忘れてしまうのに、
今日に限って、頭にこびりついて、
離れない。

「覚えてもいねーか」

冷たい声。
まさかとは思いつつ、
記憶を遡る。


ある子を、泣かせてしまった、
あの夢。
夢と思い出が溶け合って、幻想的に、
頭の奥。

泣いた子が泣きやむまで、
私は帰れなかった。

問題は、泣いてしまった子というのが、
私には「見えない子」だったこと。

皆が、その子を居るように扱うのが、
私は怖かった。
私にだけ見えない子。
幼心、
イジメの一種だと思っていた。
からかいの標的にされたのだと。
架空の子を、「居る」と言って、
皆で私をからかっているのだと。
思い込んでいたから、
尚更、
「泣かせた」なんて言われて困ったのだ。
泣き止むまで帰ってはいけないのなら、
私は永遠に帰れない。

私はあの時、どうしたのだろう。



「俺はおまえを、
 慰めることもできなかった」

「・・・」

同じ場面を、話しているのだろうか。

狐の告白に、浮かぶのはあの時の、
あの、新都市マンションの公園。

「俺のことが見えなくて、
 皆に責められて、
 途方にくれて、
 泣き出したおまえのこと、
 俺は、あの時、慰めたかった」

後ろ頭に手を当て、
唸るように、
告白する狐の身体から、
またあの、野生の薫り。

覚えのある薫り。


「前も、その前も、
 おまえは俺が見える奴だったのに、
 ・・・どうして今回のおまえは、
 見えないのか、
 それはきっと、
 大きい役目を、背負ったからなんだな・・・」
「前や、その前の私って?」
「ん?まぁ、
 ええと、前世?
 って言うのか?
 おまえの前の、
 おまえ」
「・・・・・・・・っ」

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