サグラダ・ファミリア

メシア受胎なんて、突飛すぎる気がするけど、まぁいいや。
テレビって何考え出すかわからないし。
これだけの数のエキストラを集めて、
スペイン行きまでするぐらいだから、
大規模ドッキリなんだろうな。いつ放送されるんだろう。

「学校は・・・？」

「校長先生から、電話があって、
　休学の扱いになるんだって・・・」

え。


テレビって、一人の学生の学業を停止までさせちゃうの。
これは、絶対大手局の仕業だよ。
どうしよう、後半芸能人とか出てくるかも。

「お母さんも、後から行くからね」

ぎゅっと手を掴まれて、
その力が予想外に強くて恐ろしくなった。
シンを探すと、真横に来てくれた。
困った顔をしている。

そうか、これが、メシアを受胎する運命の女の子が、
家族に見送られるシーンなのね。涙とか、流すべき？
「お母さん、私・・・お役目、
　授けられちゃった」
我ながら良い台詞。すごく、「ぽい」と思う。
「大丈夫、
　ゆうこなら、
　やれる」
母親は私の迫真の演技に、つられて少し涙ぐんでいた。
お母さん、可愛い人。

「行ってくるね」

シンは私に、成田までの青い、特別な切符を渡した。
特急に乗れる奴だ。
もう後に引けないぞ・・・？

並んで改札を通過する。


少し、わくわくして来た。



目の前を僧侶が五人、護衛のように歩いている。
振り返ると聖職者二人が同じく護衛のように、
周囲に目を光らせつつ、ついて来ている。

何だこれ。何だこの企画。


意図は？！笑いどころは？！
メシアって。受胎って。


取り敢えずノったけど。１７歳、夏だから。


楽しそうだから食いついた。




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