サグラダ・ファミリア
「シン、友達にメール打っても良い?」
成田行きの特急に、乗り込んでから伺う。
「うん、もちろん、・・・あ、
 これからさ、
 何か少しでもやりたいこととか、
 聞きたいこととか、
 欲しいものとか、
 あったら、
 何でも俺に言ってね」
柔らかい声で、温かい台詞。

「ありがとう」

右も左もわからない状況で、
優しい言葉をもらったら、
誰だって嬉しい。
自然に笑いかけたら、シンは少し驚いた顔をした。
「ゆうこ、強いんだね、
 ・・・不安じゃないの?
 急に、こんな、
 見ず知らずの男に、連れ出されて、
 何の準備もない状態で、
 外国とか、行かされるんだよ?」
「・・・」
「メシア受胎とか言われて、
 わけわかんないでしょ?!」
わけわかんないことは確かだけど。

ドッキリってこういうもんでしょ。


このままノっておけば、海外行けるし。
面白そう・・・。


でも、

彼は私がドッキリに気づいてないと思ってて、
こう気遣ってくれてるわけだから・・・。ええと。
「・・・わけ・・・わかるよ、
 何となく、そういう・・・ことに、
 なるんじゃないのかなって、
 昔から、思ってた、」
みたいな?
「私は、何かやらなきゃいけないことが、
 あるな、って、何か大きな仕事を、
 やらなきゃ、って、
 そういう感覚、あったの、小さい頃から」
どうよ。
「だから、怖くない、
 ああ、ついに、
 お役目を果たす時が来たんだって、
 そんだけ」

完璧。

この、ソノ気になっちゃってる感。
非の打ち所がないね。




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