アリスのいた街
12年前









12年前。



俺は5歳だった。



俺の名前は、ユウリ。








うちの父は起業家。しかも、その企業が大成功したために大富豪。昔から、欲しいものは何もかも手に入った。







だけど、5歳の頃から会社を継ぐという重圧をかけられていた俺は、耐えきれなくなり逃げ出した。

理由はそれだけではない。


親からの愛が、自分にはないような気がしたから。
顔を合わせると、勉強、会社、相続。
そんな話しかしない両親に対して、俺は疑問以外何も浮かばなかった。





金で買えない愛が、俺は一番欲しかったんだ。










だから、俺は逃げ出した。




この家から逃げ出した。








走って走って走って。









体力の続く限り走って。










気付けば、辺りは真っ暗になっていた。















街灯も、人も、何もない。













< 2 / 26 >

この作品をシェア

pagetop