SEVEN WINGS
「ねぇ……」
「あの方は、フォルのことが嫌いなんだもん。しょうがないよ」
 僕の言葉を遮り、苦笑しながら説明するティア。
「それで、さっき言ってたことなんだけど、ちょっと離れたところで、悪さばかりしてる吸血鬼がいるらしいよ? それを退治してこいって」
「へぇ、吸血鬼か。……って、いきなり難易度高すぎない!?」
 いきなりのことで、ちょっとびっくりしてしまう。
 吸血鬼って、あの吸血鬼だよな。ドラキュラ伯爵とか言う強そうな……。
「うん、強敵だと思う。でも、大丈夫だよ。フォルは私が守るから」
「あ、貴方は誰ですか?」
「え?」
 こ、こんな優しい子がティアなわけない。笑顔なのは変わらないが、いつもの、何か企んでいそうな、怖い笑みとは違う、純粋そうな笑み。
 だったら、たぶんこれは、ウィータさんの嫌がらせだ。幻覚に違いない。
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