海までの距離
ブレスレットが、左手首でしゃらりと揺れた。









「私、苺のにする!」

「えっと、私はチョコバナナ」


万代のクレープ屋で、私達はそれぞれオーダー。
クレープが焼ける匂い、久しぶり。
レードルで鉄板に流された生地をくるっと大きく広げる店員さんの様子を、2人で見つめる。


「真耶ちゃんはいつもチョコバナナだね」

「咲だって。苺かキャラメルじゃん」


クレープを受け取りながら、私達は笑った。
万代には大きなバスターミナルがあり、私達がこうしてクレープを食べる時はそこに設置されているベンチに腰を下ろす。


「真耶ちゃん、無事に願書出せて良かったね。お疲れ様」


クレープを一口かじって、咲がぺこりと私に頭を下げた。
労いの言葉がむず痒い。


「まだまだ安心できないけどね」

「大丈夫!指定校推薦だもん、余程のことがなければ落ちないでしょ」


そうは言っても、不安は払拭しきれない。
万が一落ちたら?
また気合いを入れられるようなメンタル、私にあるだろうか。
…いや、駄目だ。センター入試から受ける咲にしてみたら、私の不安なんて。
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