海までの距離
それに応じたのは、有磨さんの言葉に何かしらの意図を感じたから。













「お手洗いに行ってくる」レナさん達に一言断って会場の扉を開くと、有磨さんはすぐ側の壁にもたれた。
私も有磨さんの隣に並ぶ。
まだまだライブは中盤戦、そのせいかロビーに出ているのは私達と数人しかいない。


「今日のイベントは微妙だわ」


ふう、と小さな溜息をひとつ。
久しぶりに会う有磨さんは相変わらず。
服装も、化粧も、私に対する態度も全て。
私の憧れる有磨さんの形が、ここにある。


「ハーメルンは、来年まで新潟に来ないですしね」

「つまんないな。たまには東京までライブ観に行っちゃおうかな」

「この前、JIGSAWのライブ観に、東京まで行ったんですよね?」

「うん。行った甲斐のあるライブだったよ」


羨ましいと思っていた遠征。
それが、私ももうじき叶う。
大学生になったら今以上に沢山ライブに行って、ライブレポートを書いて、いつか公の場でそれが発表できるように。
< 129 / 201 >

この作品をシェア

pagetop