海までの距離
私は、ひたすら溜め込むしかない。










行きつけのライブハウスで関東のバンドが集まるイベントがあるという連絡を要さんから受け、いつものメンバーでライブを観に行った。
心惹かれるバンドは取り立ててなく(2番目に出てきたゴシック系のバンドはまあまあ良かったかな)、ただ「これで久しぶりにホームページを更新できるなあ」なんて薄らぼんやりと考えながら観ていた。
さしたる興味の沸かないバンドであっても、勉強のためにライブレポートは書けた方がいい。
頭の中であれやこれやと、表現や慣用句をパズルのように組み立てていた。
そんな私の心境を鋭く察知したのは、有磨さんで。


「真耶ちゃん、退屈?」

「…えっ!?」


転換の隙をぬって、周りに聞こえないように、私にだけ耳打ちをした。


「ちょっと休憩しない?長丁場だから、疲れちゃった」


いつもの有磨さんからは考えられない、些か強引な誘い。
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