海までの距離
「優香さんと玲奈さんとライブ観に行っていた帰りですよう」
『ほーう。誰のライブ?』
「関東のバンドがいくつか出てるイベントです」
『ああ、成る程ね。楽しかった?』
「まあまあかな」
『随分と上から目線じゃねぇの』
「ごめんなさい」
海影さんの笑い声が、耳の中に響く。
手袋をしているせいだろうか、電話を耳に当てている手が熱い。
「私は早くハーメルンに会いたいもん」
『嬉しいことを言ってくれるねぇ。26日、来てくれんだろ?』
「是非!」
海影さんの洋々たる声。
大学に受かったご褒美と証して、両親から東京にライブを観に行くという許可を貰うことができた。
私がバンドが大好きなことは二人ともよく知っているから、説得はそれほど大変ではなかった。
「今まで我慢していたんだし」と、お父さんは言ってくれた。
今までの縛りを考えたら、これはもう奇跡に近いと思う。