海までの距離



「優香さんと玲奈さんとライブ観に行っていた帰りですよう」

『ほーう。誰のライブ?』

「関東のバンドがいくつか出てるイベントです」

『ああ、成る程ね。楽しかった?』

「まあまあかな」

『随分と上から目線じゃねぇの』

「ごめんなさい」


海影さんの笑い声が、耳の中に響く。
手袋をしているせいだろうか、電話を耳に当てている手が熱い。


「私は早くハーメルンに会いたいもん」

『嬉しいことを言ってくれるねぇ。26日、来てくれんだろ?』

「是非!」


海影さんの洋々たる声。
大学に受かったご褒美と証して、両親から東京にライブを観に行くという許可を貰うことができた。
私がバンドが大好きなことは二人ともよく知っているから、説得はそれほど大変ではなかった。
「今まで我慢していたんだし」と、お父さんは言ってくれた。
今までの縛りを考えたら、これはもう奇跡に近いと思う。
< 139 / 201 >

この作品をシェア

pagetop