海までの距離
今日は私の知らない海影さんばっかり見ちゃう。
私の知らないこと、まだまだあるんだな。当然なんだけど。


「あ…はい。だから毎年、誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントは一緒くたなんです」

「なんだよー、言えよー!そしたら俺だってプレゼントしたのに!あっ、でも彼氏に申し訳ないか?」


早口でぺらぺらと話す海影さんに、私はきょとん。
海影さんのオレンジジュース、アルコール入ってないよね?海影さん、素面だよね?


「…これ、親から貰ったんですよ」


海影さんの声が途切れたところで、私は海影さんの勘違いを解くことができた。


「なんだ、年頃の子だからてっきり彼氏からかと思ったじゃんか」


海影さんが苦笑いをして、煙草を口にくわえた。
かち、とライターを擦る。
久しぶりだな、この音も。
煙草の煙、ライターの音、吐き出す溜息。全てが、恋しい。


「彼氏なんて、高1の時にちょっといたくらい」

「はは、M高だから勉強が忙しかったか?」

「単純に、モテないんですよ」


元彼は中学の時の同級生。
高校は別だから、別れてから会うことはなかった。
連絡だって、互いの誕生日にメールを送ったり送らなかったり。
今年の私の誕生日には、メールは来なかった。
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