海までの距離
嬉しいけど、海影は何を考えているの?
有磨さんと知り合った時も、こんな感じだったのかな。
そもそも有磨さんと海影は本当にバンドマンとファンという関係だけ?
バンドマンとなんてステージを隔ててしか関わりを持ったことないから、海影の深意が見えない。
一人で悶々と考えていたら、気付けば我が家のすぐそこまで来ていた。


「あっ、そこのセブンイレブンの駐車場に停めて下さい。そこからすぐだから」


私が最後の指示を海影に出すと、海影は「はいよ」と言ってウインカーをつけた。
そのまま国道を横切って、スムーズに駐車場に滑り込む海影。
運転が上手いか下手かなんて、免許のない私にはちっとも分からないけれど、なんだか海影の運転はスマートな気がする。
海影は店の前に車を停め、私はシートベルトを外した。


「今日は有難うな」

「とんでもない!こちらこそ、送って頂いて有難うございました」

「いいっていいって。今から俺はあいつら回収して帰るから」

「ホテルに?それとも、ご実家に帰るんですか?」

「C区の実家。今日は皆で俺ん家に1泊。明日には仙台向かうよ」


C区は駅周辺から殆ど離れちゃいない。皆の回収から床に着くまで、きっと早いだろうな。
そっか、明日にはもう海影はいないのかあ。


「来月、また新潟来るから。その時、また」


海影が携帯を取り出し、「ほら」と私の方に向けた。
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