海までの距離
私の受験への思い入れと言い、今のライさんの話と言い、海影さんの周りへの熱意は脱帽だ。


「…と、まあこういう経緯があってハーメルンに加入したという話。それを、どこからどう漏洩したのか、悪く脚色してデマの情報が一部のファンの子の間で出回ってるみたいでね。俺と凪が大学生だっていうのも、俺らは滅多に同業者に言わないのに、なぜかネットの掲示板に書かれているし。気分は良くないよな」


言われてみればそうだ。
プライベートのことまでがちゃがちゃと詮索され、あることないこと話が飛び交うなんて、普通の神経していたら堪えられない。
そう考えると、自分がライさんに聞いていたことの内容がとても不躾だったと気付く。
どんなに今私に親しくしてくれているとは言え、ライさんはハーメルンのギタリストだ。


「すみません。なんか、根掘り葉掘り聞いちゃって…」

「とんでもない!自分から話したことなんだし」


ライさんは片手を横に振って、私の謝罪を否定した。
それと同時に、テーブルの上に置いてあったライさんの携帯がけたたましく震えた。


「おっ、海影君から電話だ」


ライさんが携帯に手をかける。
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