海までの距離
ちらりと壁にかかっている時計に目をやると、いつの間にか16時になるところ。
楽しい時間なんてあっという間なんだ。無情なほどに。


「海影君?お疲れ様。そう、案内済んでお茶してる。うん、あのカフェね。あ、駅まで行こうか?…了解!んじゃ、今お店出るよ」


ライさんの口ぶりから、どうやら海影さんがこちらに向かっているようだ。
もうじき海影さんに会える。
ライブにも行かなくなり、ずっと勉強漬けで、モノクロームのような毎日だった。
その瞬間だけを待ち焦がれていた。
枯渇した砂漠のような生活に、やっと雨が降るような。
ライさんが電話を切る。


「お兄様がお迎えに来てくれたよ、真耶ちゃん」
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