air





何事もなかったかのようにあたしの横を通りすぎようとした児玉くんを見て、あたしも止まっていた足を再び動かした。

右斜め先を歩く児玉くん。




「何で遅れたの?」




ドキドキはしない。

いつもだったらするはずなのに、今は何故か落ち着いていて。


小さく発したはずのその声は、2人だけしかいない廊下によく響いて大きく聞こえた。

児玉くんは振り返るとあたしを見てにっこりする。




「先生に呼び出されてさ」




そう話ながら児玉くんはあたしに歩幅を合わせて隣を歩いた。


"なんで?"と聞くと"授業中に携帯使ってんのバレた"なんてなんともやんちゃな答え。


さっきまで早く着いてほしかったはずの体育館の入り口を目の前にして、ちょっと悲しくなるあたし。




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