飛べない黒猫
魔法の目
年が明けて、早々に青田と洋子は籍を入れた。

蓮は同居せずマンションに残ると申し出たが、2人は承知しなかった。



「だめよ、だってマンション売る予定なんだもの。
そのお金で、お店の改装しようと思って。」


「じゃ、俺、アパート借りるし…」


「うん、それは蓮の自由だから構わないけど。
でも、少しの間でいいから一緒に住んで欲しいってダーリンが言うのよ。」


…ダーリンって。


「ほら、和野さんの息子さんが入院したじゃない?
1人息子は独身で、お世話する人がいないらしくて。
しばらくは、こっちに戻れないから大変なの。
家事は、あたしがするから大丈夫なんだけど…」


和野の件もあり、入籍を早めて同居を急いだのは事実だった。


「日中、あたし達は仕事で家を空けなきゃならないでしょ?
真央ちゃん1人を留守番させてるの不安なのよ。
蓮が家にいて…引きこもって仕事でも、寝てるでも、何でも良いから居てくれるだけで安心なの。」


現に、真央の母親は強盗に殺されている。


「蓮は、今までと変わりなく部屋で仕事に明け暮れてて。
セキュリティ入れてるから、何かあれば警備会社の人が飛んでくるから。
ねっ、お願い!
せめて和野さんが戻るまで一緒に住んで欲しいの。」



理詰めだった。

真央の精神的な状況を知っているだけに、従わざるをえなかった。


「蓮は1Fのゲストルームを使ってって。
広くって、陽当たりが良くって最高の部屋よ。
あたし専用の書斎もあるのよ、2Fの真央ちゃんの部屋の隣。
それでも、まだ空き部屋あるんだから…
おそるべし!豪邸よねぇ。」


洋子は他人事のように言って笑った。


「仕事辞めて、豪邸専業夫人にならないの?」


「………なんで?
だって、あたしは、あたしだもの。
結婚しても、あたしは変わらないのよ。」
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