Rose of blood *short story*
エリーは俺の頭を愛しそうに優しく撫でてくれる。


その手がとても心地よかった。



「アッシュっていうのは私の死んだ息子の名前。あなたと同じくらいの時に…死んだの。まだ6歳だった…」

『似てるの?』

「なんとなぁく…ね」



エリーが笑うから、俺もつられて笑顔になる。


笑顔が綺麗な人だなって思った。


でもすぐに笑顔はなくなり、とても悲しそうで辛そうな目をして俺を見る。



「今日から貴方のお家はここよ。アッシュ、貴方はこの屋敷の主であるルセンタ・セルフィス伯爵に……買われたの」

『…買われた?』

「そうよ…私にもどういう経緯で買われたのかは分からないけれど、買われた以上セルフィス伯爵のご命令は絶対よ……逆らってはダメ」

『言うことを聞かなかったら…どうなるの?』

「罰を与えられるわ…死んだ者も何人も見てきた。だから……」



苦しそうな顔をして涙を流すエリーを見ていたら、俺は『分かった』と頷くことしか出来なかった。






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