I LOVE YOUが聴きたくて
漸く、アトリエに辿り着く。

見晴らしの良い浜辺。

建物が見えても、辿り着くまでが長い。

老人にとっては、特にそうであった。


老人は、テラスに上がり、怜樹のアトリエの部屋の中を、そっと伺った。


部屋の中は、破れた絵画や壊れたもので、散乱していた。


「ありゃまぁー」


老人は、目を丸くする。
そして、怜樹の姿を探した。


怜樹は、部屋の真ん中で、うなだれて、座り込んでいた。


老人は、細い目を更に細くして、怜樹に声をかけた。


「絵描きさん」

怜樹は、老人の声かけに耳を傾けた。そして、徐に、ゆっくりと顔をあげた。
怜樹は、茫然と老人を見た。

「まぁまぁ、どうしなすった。酷い顔をして。美男子が台無しじゃ」

老人は、目を細めて、眉を下げる。

「絵描きさん。外に出てみらんかね。爽やかな潮風が吹いておるぞ」

老人は、優しく、怜樹に手招きをした。
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