I LOVE YOUが聴きたくて
綾は、彼の行動が理解できずにいた。
勿論、こんなことは初めてで。
不思議な顔をしている綾に、彼は勧める。
「良かったら、使って」

「あ、…ありがとう」

綾は、戸惑いながらも、彼の好意だと思い、彼が差し出したタオルを使った。
そして、すぐに返そうとして、
「あっ、ごめん、洗って返す」
と、綾は、慌てて言った。
「いいよ。俺が勝手に貸しただけだから」
そう言って、彼は、綾からタオルを受け取った。

「あぁ、…」
綾は、なんとなく返事をする。

【だいたい、何で、笠原くんは、私にタオルを貸したのだろう。クラスメイトだけど、接することはないのに。てゆうか、部活中のはずなのに、何でここにいるんだろう。……。あ、水でも汲みにきたのかな。用事があったんだろうな】
そんなことを考えていた。
しかし、やはり意味不明だなと、綾は思っていた。
彼は、サッカーがうまく、勉強もできて、女子にも大変人気があるのを、綾は傍目に知っていが、特にしゃべったことはなく、彼は、いつも男子の仲間たちと一緒に過ごしている様な人で、女子とは、あまりしゃべらない。

勇気を出した女子や自分に自分がある様な女子が話しかけると、必要以上にしゃべらず、クールに話す。彼は、洗練された雰囲気の人だ。

綾は、彼とは、あまり接することがなかったので不思議なこともあるものだと思っていた。
「早乙女さん、生徒会の役員は、もうしないの?」
「え?」
綾は、彼が自分のことを尋ねてきたことに驚いた。
彼が話かけてきたことも驚いたし、しかもその内容が、個人的なことだったので、かなり驚いていた。
驚きながらも、質問されたので、綾は、とりあえず答える。
「うん。三年生になったから、受験にむけて集中しようと思って」

「そっか。大学に進むの?」
「うん」
「何処の大学に行こうと思ってるの?」
「え、…まぁ、いくつかあるんだけど…」
まだ受かるかわからないし、綾は、言葉を濁す。
「そっか。あっごめん、いろいろ聞いて」
「あ、ううん」
「そろそろ戻るよ、部活中なんだ。じゃあね、また明日」
修は、クールに去って行った。
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