I LOVE YOUが聴きたくて
夜が明けて、朝がきた。

暗闇が明けていくのを、怜樹は、ベッドに倒れこんだまま、感じていた。

今日は、午後からの仕事だった。

時間の余裕があるとはいえ、健康のために、早起きは日課だった。
しかし、今日は、起きれない。
体が、脳に反して動かない。
怜樹は、昨夜、一睡もできなかった。

海の波の音を聞きながら、ベッドに横たわっていた。

カモメの鳴き声を聞き、冬の訪れを知る。


暫く、ずっと同じうつ伏せ体制でベッドに横たわっていたが、徐に、寝返りをうった。

怜樹は、仰向けになった。

【もう、起きなきゃな…仕事の準備をしないと】

怜樹は、ゆっくりと起き上がった。

【流石にきついな。二十歳のときでも、徹夜は楽勝だったのにな】
怜樹は、苦笑いをした。

ゆっくりと立ち上がり、アメリカンを作ると、コーヒーカップを片手に、怜樹は、外のテラスに出た。

冷たい風が、怜樹に吹きつける。

一睡もできなかった怜樹を、芯から引き締めた。


怜樹は、テラスの椅子に腰をおろした。

そっと、コーヒーカップをテーブルに置く。

怜樹は、椅子の背もたれにもたれかかり、空を仰いでいた。

静かな海辺で、聞こえるのは、波の音だけ。
怜樹は、波の音を聞きながら、目を閉じて、冷たい風に身をまかせていた。


砂を踏む足音が、聞こえてきた。その音は、だんだんと近付いてきて、怜樹の側で止まった。
そして、
「よっこらしょ」
と、声がして、腰をおろした様子だった。

その声に、おじいさんがやってきたことを知る。

しかし、怜樹は、一睡もしていなかったので、動けないまま、目を閉じたまま、椅子にすわって空を仰いでいた。
< 77 / 200 >

この作品をシェア

pagetop