永久の灯火†久遠の祈り
5.偽りの記憶
"あたし"の記憶は、知らない二人の男女との会話から始まる――――。





『目が覚めたのね。よかった』

『心配したんだぞ』


―誰……?―


『誰ってお前の父さんと母さんだろう?』

『リヒト、大丈夫?』

女の人が心配そうな顔で覗き込んでくる。


―リヒト……。名前?―


『そうよ、莉人はあなたの名前でしょ』










その二人の話では、あたしは階段から落ちて頭を打ったらしい。言われてみれば確かに頭は痛かった。

それから、病院に連れて行かれ、医師から階段から落ちる以前の記憶を失っていると言われた。









あたしが記憶喪失になってから、父さんと母さんにアルバムを見せられ、色んな過去の話を聞かされた。

でも、あたしの記憶が戻ることはなかった。

何度も見聞きしているうちに、それはよりリアルになり、あたしの記憶を新しく形成していった。



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