法螺吹きテラー
トン、トン、トン。
2人分の足音が、辺りに響く。
そして最後の段を下りた時、
階段脇に、人影が見えた。
「遅いよ」
その人物は、南葉だった。
先に、行ったんじゃなかったのか。
さっきの先輩の話を思い出し、
俺は少し、南葉との距離を取った。
最初とは違い、
南葉は俺たちの、斜め前を歩く。
時々、彼はこちらを振り向いた。
まるで、何かを確かめるかのように。
再び俺に纏わりついた先輩は、
その隙を見計らって、囁く。
「中に入った奴が、
次にどこかの建物から出る時、
必ず誰かに見られていなくちゃいけない。
そうしなくちゃ、
入れ物に定着出来ないらしい。
もちろんその時には、周りに、
入った事に気づかれちゃいけないんだけど
……遅いね」
言い終わると同時に、
先輩は顔を離し、
そして南葉が振り向いた。