法螺吹きテラー


振り向く事なら、出来るだろうか。

あるいは、目を閉じる。


こちらへ向かってくる、
あの誰かを避ける、簡単な方法。


それを、声をかけられて、
ようやく思い出せた。



聞き覚えのある、
その声の方へと顔を向けた。


すると、声の主は、
俺の答えも待たずに、話を続ける。


「死んじゃうんだよ。
ドッペルゲンガーに会うと」


……え、じゃあまさか、
俺、死ぬんですか?


振り向いた先に居た、
同じ部活の先輩に、そう尋ねようとした。


だけどやっぱり何かを言う前に、
先輩は次の言葉を紡ぎだす。


「まあ、嘘なんだけど」


……『嘘』……?



じゃあ、やっぱりこれは、
部活の先輩たちによる、悪戯?


ここまで来る1年は、
じゃんけんで決めた。

だから、俺に対する嫌がらせでは、無い筈



……あれ、じゃあ上靴とか、
合わせられないんじゃ……?



その事に気が付き、
もう1度、怖いけれど、上を見た。



< 6 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop