頭痛
 香澄の命が、秋史の手のひらから、音もなく消えてゆく。

 生命の青い炎が、秋史の手によって、ゆっくりと搾り取られていくのだ。

 全ては秋史の意のままだった。

 香澄の目が見開かれると、瞳の輝きは失われ、偽眼のような無機質で艶やかな瞳に変わった。

 その様子を楽しんでいるかのように、そこには香澄の変化を恍惚と眺める秋史がいた。

 断続的に痙攣する香澄を、その度に秋史は力を込めて押さえ込み、絞め上げる。

 やがて、香澄は自分の髪の毛をくわえていたが、その口許から、するすると抜け落ちた。


 その時である。

 秋史の体の中に溜め込んだ大量の息が一気に吐き出され、ようやく我に返った。

 香澄の首筋に、秋史の指先がめり込んでいた。

 秋史は慌てて力を緩めたのだか、それと同時に、香澄は絶命した。
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