STRAY・CAT 〜ソノ指先ニ恋ヲスル〜《年上男と媚薬な契約》完
(こんなオレに――また
誰かを愛する資格なんて――…)



その時汐音が『ん……』と
かすかな吐息をもらし、
小さく身じろぎした。



そして何かを求めるように
切なげに眉を寄せ、『那智』
とうわごとのように名前を呼ぶ。



「ハイハイ、ここにいるよ。

――今はまだ、ね」



そう言って身じろいだ際に
顔にかかった髪を払い
シーツをかけ直してやって
から、那智はそっと
ベッドを抜け出た。



向かった先は別室の
ピアノの前。


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