STRAY・CAT 〜ソノ指先ニ恋ヲスル〜《年上男と媚薬な契約》完
こんな時間に弾くものでは
ないが、汐音はあの分だと
起きることはないだろう。



窓も防音ガラスだから、
元より外に聞こえる心配はない。



「………………っ!」



鍵盤に指を置いた那智は、
感情のおもむくまま音を
奏で始めた。



強く、強く、

魂を振り絞るように体を
揺らし、ほとばしる想いを
音にのせる。



その音は演奏家としての
自分からは信じられない
ほど荒々しくて、いびつで。



だけどそれが今の自分の
本当の姿なんだと、那智は
思った。


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