STRAY・CAT 〜ソノ指先ニ恋ヲスル〜《年上男と媚薬な契約》完
「汐音……。

――わかったよ。とって
おきの子守唄、弾いてやる」



那智はフワリとほほ笑むと
出入口へと向かい、ドアは
開け放したまま出て行った。



そして短い静寂の後――
空気を震わせ、豊かな
ピアノの音色が部屋に
流れ込んでくる。



なんて曲だろう。

やっぱりあたしの知らない曲。



でもその旋律はどこまでも
緩やかで優しく……スーッと
溶けるように、あたしの
中に入ってくる。



(なんて……優しい音……)



その音で満たされた体が
フワフワと宙に浮き、
天まで昇ってしまいそうな。


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