薄桃の景色に、シルエット。

真昼の月-Among things of the future when he prayed-



 こんな青々とした宙が広がる日はつい、月を探してしまう。

 探そうと思わないと上手に見つけられないが、でも確かに存在している。

 そんな真昼の月が好きだったあの頃。生きる気力を失い、死を待つだけだった日々。

 それが一人の少年との出会いによって一変した。

 何故か私の心の内を察してくれた。今思えば、本当に不思議な少年だった。


「未月(ミツキ)」

「やっと来たか、愁(シュウ)。待ちくたびれたぞ」

「悪い、悪い。……の割には楽しそうだったな」

「昔の事を思い出してな」


 いつものカフェテラスで待ち合わせていた友人と落ち合う。

 飲み切れなかった珈琲を持って席を立った。

 騒がしい大通りをゆっくりと歩く。忙しなく慌てている人達に追い越されては擦れ違う。


「花、買っておいてやったぞ」

「サンキュ。レポート手伝ってくれって頼んだのは俺なのに、こんな事に付き合わせて悪いな」

「いや、都合が今日しか合わなくて済まなかった。もっと早く都合がついていれば、愁もゆっくり行けただろう」

「そうかな。どっちにしろバタバタしてた気がするよ」

「あはは、そうだな。愁はそういう奴だからな」


 いつの間にか大学生になっていた。あの少年には未だに会えていない。

 どこで何をしているのだろう。もしかしたら大学で会えるかもしれないと期待していたりしたが、それは叶わずじまいだ。


「にしても、普通はこういう事には付き合いたくないって言うんだけどな」

「私が普通なら行かなかっただろうな。……私にはあまり関係がないとも言い難いんだ」

「そっか、未月も病気だった事があるんだよな」

「うん。それこそ、死ぬかもしれなかったんだが、ある少年に救われたんだ」

「ふーん」

「何だ、その素っ気無い返しは」

「別に?」


 随分と棘のある言い方だな。全く。
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