薄桃の景色に、シルエット。
「まぁ、そういうわけだから私も付き合わせてくれ。それに愁の友達には是非会って挨拶しなきゃな」

「……挨拶?」

「そうだ。愁は私の大事な友人だからな」

「……そうですか」

「うん」


 何気に肩を落とす愁に、私は何かまずい事を口にしただろうかと不安になる。

 そんな私に気づいたのか、愁はいつものように笑った。


「何でもねーよ。ほら、着いた着いた」


 大通りから少し反れた道を行けば、少し高台にある見晴らしの良い霊園に着いた。

 私は愁の後について行く。


「良い奴だったんだ。俺の一番のダチでさ」

「そうか」


 鷹岡家之墓と書かれた墓石の前まで来ると、愁はしゃがみ込んだ。

 どうやらここに愁の友人は眠っているようだった。


「久し振りだな、ばか」

「ばか?」

「……いや、翔多(ショウタ)っていうんだ」

「翔多君か。……在原未月です。愁とは仲良くさせてもらってます」

「へぇ? 未月、敬語使えるんだなー」

「失敬な。敬語くらい使えるに決まってるだろう」

「あははっ」


 霊園には不釣り合いな笑い声が響いた。常識的に考えてどうかと思うが、正直嬉しかった。

 愁は毎年この時期になると元気をなくすから。


「って事で、翔多。俺の大事な奴だ。こいつの事も守ってやってくれな」

「友人が抜けてるぞ、愁」

「ほんとの事だからいいんだよ、細かい事は気にするな」

「ったく……」


 病気で若くして死んだという翔多君。きっとやりたい事があっただろう。夢もあっただろう。

 その悔しさ、私には分かる。私もそうだったから。

 初対面で、しかも会った事は無いけれど。

 同じく病気だったよしみだ、君の分まで精一杯生きようと思う。

 ……愁の事、よろしくな。
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