LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■自閉症
○Side 奈穂

部屋の隅にある本棚…
そこは秘密の本棚になっている

幼稚園、小学校、中学校
3つの卒業アルバムが入ってるの

今までに見たのは理香だけ…
それくらい隠したい物


『何これ、アルバムじゃん』

それなのに彼に発見されてしまうなんて…

『ち、違うの! 私のじゃ…ッ』
『馬鹿、んじゃ誰のアルバムなんだよ』

真中くんは不機嫌そうに言うと、中学校のアルバムを開いた

『別に隠す必要なくね?』
『…』

だって…
だって私…

『ただ、も少し笑った方がいいんじゃん?』

「記念なんだから」と真中くんは苦笑する

だって笑えないもの

『…私、自閉症だもん…』
『…え…?』

だからずっと友達だっていなかったし、学校も楽しくなかった

今だって…
理香しか傍にいない

『お前、何言ってんの…?』
『…』
『俺からしたら奈穂は十分に表情豊かだよ?』

え…?
私が…豊か…?

『笑うし泣くし… 素直だし? すぐ赤くなる所とかね』
『それは真中くんが…』

貴方が教えてくれたから
貴方がそう変えてくれた

『俺が?』
『…えと…』

《〜♪〜♪》

…何故かいつもタイミング悪く鳴る携帯

『綾だ…』

真中くんの言葉に私は言葉を詰まらせた
また彼女の所へ行ってしまう…

行かないで…
まだちゃんと言えてない

そう思った瞬間
《留守番サービスに接続します》
聞き慣れた音声案内が聞こえた

留守番に…切り替えた…?

『…いいんですか?』
『さぁ、どうせたいした用じゃないだろ』

真中くんはそう言うと着信音量をサイレントにして鞄へ放り投げる


今日は私といる事を選んでくれた
不謹慎と解りながら、それが嬉しくて堪らないよ…
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