LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■晩酌

深夜0時…

『洋くん、今日は息子の部屋を使ってくれ~! 私は車に乗れなくなってしまった…』

そりゃ酒呑むからだよ…

『あの、オジサンって…』
『お父さんだろぉ?!』

突然の大声に心臓がビクリと跳ねる
でも俺、あんたの息子じゃないんだけど…

そう思ったが、面倒なので言うのは止めた

『…お父さんって酔ってる間の記憶ってあるんですか?』
『ないない! まーったくない!』

何故か自慢げに言うお父さん
俺は精一杯、笑いを堪えてビールを一気に飲んだ

そのせいか頭がクラクラしてうまく考えがまとまらない

『記憶がないなら安心だけど、奈穂には言わないでくださいね…?』

空になったビール缶をゴミ箱に投げ、もう1缶を開ける

少し振ってしまったのか
気持ちのいい位、泡が吹き出した

『俺、親の記憶あんま無いんすよ… 途切れ途切れにしか…』

一番、古い記憶は「痛い」と言う言葉

殴られて痛い
蹴られて痛い

『今流行りの虐待ってやつですよね、きっと! ただ産まれた事が許せないんですよ…』

好かれようと頑張った
いい子にしてたし、泣いたりワガママも言わなかった

でも無駄だった
生きてる事が虐待の理由だったんだから

『だから奈穂見てるとムカつくんです…』
『…』

どんな返事が返るだろう…
そう思ったのに奈穂の父親からの返事は返ってこなかった

『お父さん…?』

恐る恐る顔を上げた俺が見たもの…
それは机に顔を伏せて酔い潰れた姿だった

『寝てたんかオヤジ…』

呆れて床に転がると見慣れない天井が広がっていた

『気分いーっすね~… 親父と話すのって! つかあんたの息子じゃないけどさぁ…』

どれくらい独り言を続けただろう
気が付いたら深い眠りにおちていた…
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