LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■借り物
○Side 奈穂

好きな人…
そんな事言われたって真中くんはここにいない

いたとしても一緒に走る勇気なんて…


『奈穂!』

突然、誰かに名前を呼ばれて振り返ると理香が手を高く上げていた

『理香ぁ…』

どうしようもない事に思わず涙が出てしまう
理香はそんな私に手招きして呼んだ

『どうしよう! 私…ッ』
『知ってる! でも洋がまだ帰ってないの!』

そんな…
諦めかけたその時、私の目にある人物が入った

何故か当たり前のように理香の隣にいる彼…

『相模…? 俺の顔に何かついてる?』

それは真中くんのクラスメートである和之くんだった

『あの! 私と走ってもらえませんか?!』

クラスの優勝のため、私は必死だった
少しでも役に立ちたいの…ッ

『えッ! でも好きな人なんでしょ?!』
『はい! 走ってくれるだけでいいんです!』

なりふり構わず、ガバッと頭を下げる
その瞬間、背中に熱い重みを感じた

『へぇ、奈穂の好きな奴って和之なんだ?』

…この声…

『真…中くん…?』

たった今、歓声と共に校内に入ってきたらしく
真中くんは力尽きたように私の背中にもたれていた

『ちッ 違います! 誰でもいいから走ってほしくて…ッ』

確かに好きな人を連れていかなくてはいけない
だけど10000mも走ってきた真中くんに「走ってくれ」と頼めるわけないから…

『あの… 他を探しますね…』

話している間にも他の人はコースに戻っていく
もう時間はないんだ…

『何で? 俺でいいじゃん』
『え…?』

俺でって…
聞き間違いのような気もして、彼の顔を見る
するといつもの優しい笑顔を浮かべていた

『でも今、10000mも…』
『そんだけ走ったら300mくらい何とでもないし』
『…でも…』

本当は走ってほしい…
でも…

『相模、迷ってたら最下位になるよ?』
『は、はい!』

そうだった
迷ってる時間なんてない

『っお願いします!』

和之くんの一声もあって、私は真中くんの手を引いてトラックに戻った
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