攪恋慕~かくれんぼ~
『如月』のスタッフも皆良い人ばかりだが、室井さんと話している時が一番心が和む。

僕は、この室井さんという年下の女性に、曾ての妹の面影を重ねていた。

目が見えないのに、面影を重ねるという表現は適切では無いかもしれないが、雰囲気というかニュアンス的なものだ。

ただ、そんな室井さんとの関係にも杞憂に近い悩みがあった。

僕は鋭い訳でも無いが、鈍い訳でも無い。

始めは視覚障害者の僕に気を遣ってくれているだけかと思っていたが、どうも僕だけ優遇され過ぎているような感があった。

室井さんが僕に対して好意を抱いてくれているのでは……と、最近感じるようになっていた。

それが只の勘違いなら、僕の思い過ごしで終わる。

しかし僕が室井さんに対して恋心、異性に抱く感情によるものでは無くて、家族・肉親に近いものだと言ったら、室井さんは何て応えるのだろうか。

彼女に告白された時、室井さんを果たして異性として見る事が出来るのだろうか。

良い関係が保てなくなりそうで、怖くなる時がある。
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