慟哭の彼方


「チェル、行こう」

まるで買い物に誘うような気軽なノリで、アルスはここからの脱走を提案する。

まだ使い慣れない呼び名。

だけど使えば使うほど擦り切れて、愛着が湧いて、彼女への想いも募りそうな気がした。


心中は、ちっとも気軽じゃなかった。

「…そうだな」

彼女が軽い調子で頷く。

その態度も緊張しながら絞り出したものだということは、微かに震える体でわかった。



雪が降り積もる景色の中、彼女の銀髪はその色によく馴染んだ。


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