H・U・R 519
ロンメルは戦車で県道を走りながら、気まぐれに民家やコンビニやマンション、ビルや神社仏閣やその他公共施設を破壊しながら進んだ。
「パパ、私ね、破壊してほしい所があるの」
「なんでもパパに言ってごらん」
「学校の2階にあるトイレ。オバケが出るって噂なの。私、オバケ怖い」
「よっしゃ、パパにまかせろ。パパこれでも、学生のころは般若心経部に入ってたんだ」
ロンメルは軽く嘘をつきながらエレナの通う高校に戦車を走らせた。
学校に到着すると、通報を受けて駆け付けた埼玉県警が校門の前でぺちゃくちゃとおしゃべりをしていた。
警察官たちは戦車を見ると「あれは警察じゃ無理だね」と、どこかのどうにかできそうな当局を携帯で調べて連絡を始めた。
妨害されるかと心配したロンメルとエレナだったが、警察官たちが携帯をいじったり、ほかの者は戦車を写メで撮ったりしているので安心して校舎を砲撃できた。
数発の砲弾が校舎に叩き込まれた。砲撃された個所から黄塵が起こるのを見て、
「パパ、2階のトイレだけでいいのに」
とエレナが言ったころには、すでに学校の本棟の全ての階のトイレは破壊されていた。
「おおう・・・これは大変なことに」
エレナがうめいた。その時、バラバラと上空からプロペラ音がロンメルとエレナの乗る戦車に近づいてくるのが二人に分かった。
「まずい!エレナ、逃げるぞ!」
ロンメルはエレナの手を引き戦車から飛び出すと、急いで戦車からできるだけ遠くにと駆け出した。
二人の背後で、爆発音が鳴り響いた。戦車が、航空機に爆撃されたのだ。
振り返ったエレナの目に、炎と煙に包まれる我が家の新車の無残な姿が映った。
「パパ、新車が!」
「言うなエレナ!また、ポンタが貯まったら買ってやる」
二人はローソンでお昼ご飯にと冷し中華を三つ購入して帰宅した。
家では、留守番で暇を持て余したミユキが一人でコックリさんをしてキツネに憑かれていた。
親子三人でお昼ご飯を食べたあと、知り合いの神社さんに赴きお祓いを受けた。
ロンメルが後から気づいたことだが、このとき、財布の中からポンタカードが無くなっていた。
高良家で唯一起こった怪奇現象だった。

    おわり
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