片思いの続きは甘いささやき
「喬は、ずっと透子に気持ちを残したまま他の女の子と結婚すると思ってたし、それが私でもいいじゃんって思ってたんだけど」

はぁっと、気持ちを鎮めるように息を吐いた悠里。
ほんの少し潤んだ瞳は、やっぱり喬への気持ちがまだくすぶっているのかもしれない。

一年ほどのつきあい。

喬にしてみれば、透子以外なら誰でも同じスタンスでのつきあい。

突き放すわけでもなく、優しさも与えてくれるけれど、切羽詰まる愛情は与えてくれない。
何人もの女の子が、喬の懐に入ろうとして気持ちをぶつけても。

距離的には近くにいても寄り添えない心の遠さに堪えられなくなって。

女の子から離れていく。

悠里が知るだけでも何人もの女の子達が切ない涙を流している。

それでも喬の心は透子に向けられたまま。
入社した時にはもう他の男からの指輪をはめていた透子への片想いは延々と続いて。

悠里が喬の彼女におさまってからも何の変化もなかった。

『優しくできても…一番に愛せない』

初めて悠里を抱く時に口にした喬の言葉に、悠里の心は悲しみに凍えた。

ベッドに横たわる悠里を試すような喬の瞳は、その言葉は紛れもなく本心だと…。

『それでもいいなら
大切にはできる』

最後通告は、悲しいくらいに冷たい瞳とともに
悠里の胸に響いた。

透子を一番愛しながら、それでもいいなら大切にするなんて。

なんてひどい言葉。

なんて正直な言葉。

『…とりあえず、今日は優しくして』

喬を自分のものにしたい気持ちを抱えていても、きっと叶わない辛さより。

たとえ一番じゃなくても自分を大切に抱いてくれる喜びの方が勝って。

悠里はそうつぶやくしかなかった。

その日から、恋人に片想いする切ない時間が動き出した。
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