片思いの続きは甘いささやき

ちょうど雪美と出会ってすぐの頃で、雪美を手に入れたい気持ちと透子への小さな未練に悩んでいた。
悠里という恋人もいたせいで、そんな自分の想いにどう決着をつければいいのか悩み続けていた。
悠里を嫌いなわけじゃない。
ただ一番にはしてやれない。

そんな残酷な自分にも嫌気がさしていた頃。

悠里からお見合いして結婚することになった。

と突然切り出されて。

ある意味ホッとした・・。
雪美へ気持ちを全て向けられる。と感じて。
悠里の本心には気づかないふりをした。

「・・・俺の事・・・やっぱり本気で好きだったか?」

気づかないふりをしていた悠里の本心を確認するかのように、それでもしっかりとした声で喬は尋ねた。

「そうね。喬と雪美さんがちゃんと恋人同士になってしあわせに過ごして欲しいって強がるくらいには愛してたよ」

「悠里・・・」

「あ、謝らないで。お見合いは成り行きだし逃げてたとこもあるんだけど、ちゃんと私も旦那のこと愛してるし愛されてるし。ラッキーって言ったのはそういうこと。
相思相愛に勝る幸せはないなってつくづく思えるから。
・・・俺のせいで悠里は不幸な結婚したなんて思わないで。迷惑だし」

「は・・・迷惑って・・・」

「ちゃんと幸せだから。私。
喬を好きな気持ちはいい思い出。今は溺愛してくれる旦那をちゃんと一番に愛してるから」

強がりじゃなく、本当に。
逃げて受けたお見合いで、幸せを手にすることができて、なかなかいい人生じゃない?
そう表情で喬に伝える。
喬の男前の顔は確かに素敵だと思うし大切な恋を捨てようとは思わない。
それでも悠里は自分の未来が楽しみで仕方がない。

「そっか・・・良かったな。悠里を愛してくれる旦那と出会えて」

椅子の背に体を預けて、安心したような喬。
身勝手だった過去が全て許されるわけではないけれど、ほんの少し心は軽くなる。

「だから、そんな私に電動自転車ちょうだい。お願いっ」

目の前で両手を合わせる悠里が、今までで一番綺麗に見える。
愛されてる女はここまで綺麗になるんだな。

「・・・溺愛してくれる旦那を説得しろ。悠里がそうやって幸せそうに頼めば大丈夫だろ」

そう。
確実に悠里の未来は輝いているに違いない。


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