片思いの続きは甘いささやき

大きく開けられた扉をぼんやりと進むと、広い部屋の中が見渡せる。
窓からの景色も大きなガラスを通して綺麗に見える。
白を基調にした部屋は、贅沢な家具も調えられていて気分も豊かになる・・・はずなのに。

その広い部屋には、予想とは全く違う顔ぶれが並んでいて、部屋に入ってきた雪美に一斉に視線を向けた。

は・・・?

その瞳の数と意味の分からない今の状況に思わず歩みも止まってしまう。

背後にいる濠を不安げに見上げると、なんでもないことのように頷いて

「心配するな。ちゃんと喬くんもいるから」

からかうように雪美につぶやいた。

「え?」

喬の名前が出されて、はっと濠の視線に体を向けると、何人かが囲んでいるソファの横に立つ喬に気付いた。
披露宴の時に着ていた礼服とはちがって、ジーンズにパーカーというラフな格好。
どちらかというと、雪美と会う時に見慣れているその格好に、ほんの少し落ち着いた。

「あの・・一体・・・どういう・・・」

喬は確かにこの部屋にいて、思いがけないくらいの優しい瞳を雪美に送っているけれど、それでも今のこの状況が雪美には理解できない。

立ち尽くしたまま、ソファのまわりにいる面々を見てみると。

ただ一人ソファに座って・・・赤ちゃんそ大切そうに抱っこしている女性。
雪美に気付いた途端に弾ける笑顔を向ける。
整った綺麗な顔にはどこか見覚えがある。穏やかさの中に芯の強さを漂わせながら笑っているのは・・・確か。

「・・・柚さん・・・?」

ほんの少し昔の記憶を手繰り寄せると浮かぶ笑顔と合致する。

「どうしてここに・・・柚さんが?」

わけがわからない。

そして、わけがわからないのは柚さんの周りで赤ちゃんを見つめる顔ぶれ。

・・・どういうこと?

五、六人いる面々を除いてただ一人、今の状況に戸惑う雪美は、助けを求めるように喬を見た。
その瞬間、苦笑する濠に反して、嬉しそうにほほ笑む喬。

そんな表情見たことないよ・・。

雪美は更に戸惑うばかり。
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