岩内さん、フォーカス!
語源をたがえた竜
小日向望は走っていた。



マズイ。

待ち合わせの時間まで、あと五分だ。

十分くらい先に着いて「今来たとこ」って言いたかったのに!



待ち合わせ場所に着く。

膝に手をつき、荒い息を吐き出す。

周りを見回す。



萌はまだ、いないか…。



溜め息をつく。



間に合ったか…。



「望」



顔を上げる。

上品な深い色のワンピースに白いジャケットをはおった長身の女性が、ジャケットと同じく白いバッグを持って、立っていた。

その女性の薄くメイクされた顔を見ても、すぐにそれが萌だと気付かなかった。



「へ、変かな…?」


萌は不安げに服の端をつまんだ。



「可愛い…」



それ以外に、言葉が出なかった。



< 151 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop