一番星
彼は、裏返った声に笑うこともなく、ただ一言、無表情で言った。
「顔になんか付いてる?」
「………いや、なにも…」
「そっか」
「うん」
用が済んだらしく、彼は視線を窓に移した。
未だ、ピカピカと稲妻は健在。
気づけば六時半。
あと30分でどうにかなる気がしない。
はぁ、とため息をつくと、再び、
「ねえ、」
「……ん?」
今回は平常心を貫いた。
よくやったぞ。
というか、彼が自分から話かけるのをはじめて見た。
相手が私と言うのも不思議だ。
彼は私をじっと見て言う。
「傘持ってる?」
「いや、忘れた」
「うん、そうだろうね」
「え、」
………。